更地に立つ。

—デザインが生まれる、最初の瞬間の思考と緊張感—

新しいプロジェクトのご依頼をいただき、初めてその場所に立つ瞬間。それは、何度経験しても背筋が伸びるような、特別な緊張感に包まれます。

まだ何もない更地かもしれませんし、これから生まれ変わる建物の中かもしれません。しかし、そこには必ず「場の記憶」と「未来への可能性」が満ちています。私の仕事は、まずその声なき声に耳を澄ませることから始まります。

最初に現場を訪れた時、私はすぐに図面やメジャーを取り出すことはしません。 まず、ただ静かに佇み、五感を研ぎ澄ませます。

頬を撫でる風はどちらから吹き、太陽はどの角度から光を注ぐのか。遠くに聞こえる街の喧騒、すぐそばで揺れる木々の葉音。周囲の建物が描く稜線と、目の前に広がる空の広さ。その土地が持つ固有の空気感を、全身で受け止めるのです。

それは、デザイナーとしての思考と創造、そして感性が試される「真剣勝負」の時間です。

この最初の数分、数十分で感じるインスピレーションが、プロジェクト全体の骨格を決定づけると言っても過言ではありません。ここにどんな光を取り込めば、住まう人は心地よいと感じるだろうか。どんな窓を設ければ、風景は一枚の絵画になるだろうか。この場所のポテンシャルを最大限に引き出し、クライアントの暮らしを豊かにする空間のイメージが、まるで霧が晴れるように、少しずつ輪郭を現してきます。

デザインとは、机の上だけで完結するものではありません。その土地と対話し、敬意を払うことからすべてが始まります。この最初の対話が深ければ深いほど、生まれてくる空間は、その場所にふさわしい、根を張ったものになるのです。

クライアントへプレゼンテーションする時、私はこの「最初の感動」を必ずお伝えするようにしています。なぜなら、その感動こそが、これから始まる長いプロジェクトを支える、最も大切な道しるべになるからです。